2012年

9月

11日

各国の不活化ポリオワクチン接種スケジュール

各国の不活化ポリオの接種回数を表にしてみました.

 

参考にしたのは「ポリオの会」のワクチンについてのページにある

 

ポリオワクチンの各国と地域の状況(上記地図)と詳細」です.

 

改版C:2010年10月12日とありますので,現在の接種スケジュールと

 

異なっている可能性があります.

 

トータル4回が日本を含め13カ国

 

トータル5回が15カ国,6回が5カ国,7回は1カ国です.

 

初回免疫の3回は2ヶ月から始まり,多くの国が6ヶ月までに3回目を終了しています.

 

最も遅いのはポーランドで1歳4ヶ月で3回目を接種しています.

 

(ただしポーランドは4回目を生ワクチンで接種するので単純な比較はできません)

 

追加免疫は,1回~4回と様々です.なかには,生ワクチンと併用の国もあります.

 

日本と同じトータル4回接種の国をみてみましょう.スロヴェニア,スペイン,

 

日本が3回目の接種の半年から1年後に接種しています.残りの10カ国のうち

 

8カ国は,3~4年後に不活化ポリオを接種しています.

 

残りは2カ国はポーランドが5年後に生ワクチン,アイスランドが13年後に

 

不活化ポリオを接種します.

 

トータル5回の国をみてみます.追加免疫の1回目は,15カ国中10カ国が

 

初回免疫3回目の1年以内に行ない,追加免疫の2回目を2年半~9年後の

 

間に行ないます.生ワクチンと併用しているのはトルコです.初回免疫の

 

3回目と追加免疫の1回目を併用で,追加免疫の2回目は生ワクチンで行ないます.

 

残りの4カ国は,1年半~6年後に追加免疫の1回目を行ない,4~10年後の

 

間に2回目を行ないます.

 

トータル6回と7回は国々は,半年~1年後に追加免疫の1回目,4~6年後に

 

2回目,4~10年後に3回目,5年後に4回目のパターンです.

 

 

 

上の図で4回接種の国々の初回免疫の3回目と追加免疫を赤線で囲んだものが

 

下の図です.また,5回以上接種の国は1歳頃の接種と,4歳以降の追加免疫を

 

赤線で囲いました.

 

接種時期のスケールが2歳までが1ヶ月毎,2歳以降が1歳ごとなので

 

表では分かりにくいかもしれません.

 

そこで,月齢毎のグラフにしてみました. 左が4回接種,右が5回接種です.

 

縦軸は月齢で50ヶ月毎にラインを入れています.

スロヴェニア,スペイン,日本の3国は4回目の接種まで直線状になっています.

 

それに対し,その他の国は4回目で50ヶ月のラインの上下に集中しています.

 

また,5回接種の国は4回目まで直線状になっていても5回目でしっかり

 

48ヶ月(4歳)以上を超えるように接種しています.

 

各国の財政状況や使用できるワクチンが異なっているので一概に比較するのは

 

難しいかもしれません.さらに今後発売予定のワクチンとの関係もあると思います.

 

個別の対応をおこなって混乱を招くよりも,将来を見据えて(ポリオが根絶する?)

 

接種スケジュールを決めたのかもしれません.

 

 

 

ところで,昭和50年から52年生まれのポリオワクチンの接種はどうなったのか?

 

これまでこの世代の方は抗体保有率が低いため生ワクチンの接種が

 

推奨されていました.不活化ポリオワクチンが始まると必要がないとあります.

 

以下は,厚労省のポリオワクチンのトピックス平成24年6月1日の資料3より

 

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【質問内容】

昭和50年から52年生まれの方のポリオ抗体保有率が他の年齢層と比べて

低いとされ,子供の生ポリオワクチン接種時併せて接種することが推奨されたが,

不活化ポリオワクチン導入後,どのようにすべきか.

 

【回答】

不活化ポリオワクチンによるワクチン関連麻痺発生の恐れがないことから,

9月以降は,子供のポリオ接種時に昭和50~52年生まれのものに対して

ワクチン接種を推奨する必要はなくなる.しかし,流行地域等へ渡航される際は

今まで同様にポリオワクチン接種を推奨することとなる.

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生ワクチンではワクチン関連麻痺があることを認めた上で,不活化ポリオ

 

ワクチンへの導入が遅れていた(国産ワクチンを待って遅らせていた?).

 

このような経緯があると,今回のスケジュールにも疑問を持たざるを得ません.

 

多数決は必ずしも多数が正しいということはありませんが,医学の世界では

 

これまでの結果を元に,その時代のスタンダードが決まります.

 

もちろん数年後に世界中の接種スケジュールが変更になるかもしれません.

 

しかし,日本が先進国であるということを考えると,あえて追加接種を4歳以降に

 

しなかった,もしくは5回接種にしなかったことには疑問が残ります.

 

 

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2012年

9月

08日

不活化ポリオワクチンの追加免疫の時期は?

こんばんは,いし胃腸科内科の松原です.

 

今月から不活化ポリオワクチンの定期接種が始まりました.

 

当院では,昨年夏から米国の方法を参考に輸入不活化ポリオワクチンの

 

接種を行なっていました.今秋から国内で不活化ポリオワクチンが

 

実施されると報道があるまでは,輸入不活化ポリオワクチンを接種した方には,

 

「4回目の接種(追加免疫)は4歳以降に行ないます」と伝えていました.

 

しかし,国内で開始された不活化ポリオワクチンは4種混合ワクチンが

 

今冬から開始されることを考慮してか,4回目の接種(追加免疫)は

 

初回免疫の12ヶ月から18ヶ月後が望ましいとされています.

 

当院以外で輸入不活化ポリオワクチンを接種していたクリニックでも,

 

4回目の接種(追加免疫)は4歳以降と説明していることが多かったようです.

 

すると,今月始まった不活化ポリオのスケジュールは?と思われた方も

 

いるかと思います.

 

厚労省のHPには,以下のようにあります. 


「海外等で,国内未承認の不活化ポリオワクチンを接種した者については, 

医師の判断と保護者の同意に基づき,4回の不活化ポリオワクチンの 

接種のうち,一部の回数の接種を終えたものとみなすことができ,

残りの回数の不活化ポリオワクチンの接種を行う.」 

 

接種回数についてだけ述べられており,必ずしも追加免疫は初回免疫の

 

1年後にすると定義されていませんので,米国と同じように4歳以降に

 

追加免疫を受けるスケジュールでも良いかもしれません. 


 


また,厚生労働省のポリオワクチンのページより

トピックスの平成2461

「不活化ポリオワクチン導入に係る関係自治体担当者会議を開催しました」
の資料3には

 

番号31 接種間隔(有効性)

 

【質問内容】 

当面のあいだ,56日以上の接種間隔を認めると聞いたが, 

当面の間とはどのくらいの期間か.また,その期間経過後は, 

56日を超えた場合には定期接種とはみなされないのか. 

 

【回答】 

移行期間は3年程度を予定している.移行措置終了後は, 

現行3種混合同様,接種間隔は20日から56日までとなり, 

急性疾患のために受けられなかった等の事情がない限り, 

間隔を超えた場合は定期接種とみなすことはできなくなる. 

 

番号33 接種間隔(有効性)

【質問内容】
生ポリオワクチンの接種を避け,既に任意で不活化ポリオワクチンを 

1~4回接種されている方もいる。これまでの情報では、任意接種も 

カウントしたうえで不足する回数を接種することになっているが、 

保護者がどうしてもと希望された場合は、法令で定める対象年齢の 

間であれば、また1回目から定期接種として実施しても差し支えないのか.

【回答】
医師の判断と保護者の同意があれば、国内未承認のワクチンは 

定期接種として数えず、不活化ポリオワクチンを定期接種として 

4回受けることは可能である. 

 

 


「移行期間が3年程度」とありますので,単独不活化ポリオワクチンが

 

3年でなくなるのか,それとも継続して販売されるのかはわかりません.

 

(将来は4種混合に置き換わるため)

 

しかし,56日を超えても定期接種とみなされるとありますので,

 

健康被害発生時には「予防接種法による救済措置」が受けられます.

 

 

ところで,

 

4歳以降に追加免疫を行なおうとおもっても販売中止になっていては

 

元も子もありません.今回の日本向け製品は,ヒブワクチンのラインを

 

不活化ポリオワクチン用に変更したと聞きました.

 

毎年400万本単位で接種されるなら,そのラインをつぶすことはないでしょうが,

 

将来4種混合が発売されると日本向け製品の需要はガクンと落ち込むはずです.

 

そうなると国内向け不活化ポリオのラインがなくなる可能性もあると思います.

 

本来は中身が同じなのですから,国内でも輸入不活化ポリオワクチンが

 

使用できるのが一番望ましいですね.コストも安くすみますし...(^.^;)

 

(続く)

次回は各国の不活化ポリオワクチンの接種スケジュールについて)

 

 

 

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 初回のみ6,000円, 2回目以降は4,000円.

   

 診療時間内で電話で日時の受付を行なっています.

 

 月~土 8:3017:00 (土は12:00まで)

 

 *同時接種も可能です.電話で希望を伝えてください.

 

  ワクチン接種は以下の時間帯です.

  午前: 9:00~11:00

  ワクチン専用

     :13:00~13:30 (月・火・木・金)

  午後:14:00~16:00 (月・木) 

  午後:14:00~18:00 (火・金)

  

 ワクチン自体に関する電話相談は受け付けておりませんので,

 ワクチンに関しての相談は午後の外来を受診ください.

    

 当院で使用する不活化ワクチン

  薬剤名:IMOVAX Polio 0.5mL

  製造元:Sanofi Pasteur

  製造国:フランス 

  出荷国:シンガポール

  接種部位・方法:大腿に筋肉注射

 

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不活化ポリオワクチンについて
接種ご希望の方は,本文をクリックして不活化ポリオワクチンの説明書を
よくお読みになり十分ご理解して頂いた上でご予約下さい.

当院での接種スケジュールを一部変更しました.
生後4カ月以降で開始の場合は,4週間毎に3回目まで接種します.
3回目の接種は4週から12ヶ月後までに変更しました.

 
IPVについて改訂版6.pdf.pdf
PDFファイル 147.1 KB

※注意

  2012年9月以降、不活化ポリオワクチンは定期接種となり、

  上の予診票は使用できません。 

  接種当日に受付でお渡しする予診票に記載ください。

厚生労働省が発表している資料

 9月からの接種スケジュール

 

千葉県立佐原病院の「不活化ポリオワクチン接種について」(PDF)

佐原病院で接種する方に向けての説明ですが,一般的にも,

接種スケジュールやリスクの判断の参考になると思います.

 

不活化ポリオワクチン接種について(携帯版)

上記の佐原病院(PDF)が携帯でも閲覧できるようになりました.

 

不活化ポリオワクチン

よくある質問と答え(FAQ)があります.

 

ポリオワクチンに関する交通案内

ポリオに関する詳細な説明と、関連情報へのリンク集がまとまっています.

その他

 

不活化ポリオワクチン どうしんweb(北海道新聞)の記事

札幌医大 辰巳正純 先生の回答

 

不活化(ふかつか)ポリオワクチン はこだて医療情報の記事

かみいそこどもクリニック 渋谷好孝 先生のコラム

 

ポリオ患者団体 不活化ワクチン早期導入を (2011/07/06)

さっぽろ内科クリニック 蔦原紳 先生

 

 

 

以下にポリオに関するブログを載せます.